中小企業支援策のあり方

 中小企業を取り巻く環境は、景気低迷・円高・デフレ・需要の減少・競争の激化・ニーズの多様化など厳しい状況が続き、その変化も激しい。企業は、その変化への対応に、懸命な努力を続けている。企業の経営力向上のために、中小企業支援策や支援体制の一層の拡充が求められている。

◎中小企業の実態を踏まえた支援
 中小企業の支援で、まず大切なことは、企業の現況をしっかりと把握することである。中小企業は、様々な課題を抱え、日々、その解決に向けた取り組みを進めながら、自らの事業展開を図っている。企業の経営活動や課題を把握するためには、現場の状況を見ることが基本となる。そこから、解決に向けた方向を探り、支援の内容や方策を考える。
 企業の悩みに寄り添う支援は、現場密着のなかから生まれてくる。「現場が第一」は、中小企業支援の基盤と認識している。これまでの仕事においても、その姿勢を重視して取り組んできた。

◎「不足する経営資源」の補完を支援
 中小企業は大企業に比して、資金面・人材面などでの制約がある。「人・物・金・情報」と言われる経営資源が不足している。特に、小規模企業は、その状況が顕著だ。中小企業の主体的・積極的な自助努力の必要性が唱えられるが、経営資源に制約のある中小企業にとっては、必要性は認識していても、その取り組みができないという実態もある。
 経営資源の不足を、どのように補完するかは、中小企業支援の大切な視点である。人材の確保と育成、生産の効率化や設備の維持・更新、資金の調達と投資、情報化や情報機器の活用、販路の開拓、異業種交流や企業間のネットワークづくりなどの取り組みに対し、経営資源補完の視点からの支援策を展開したい。中小企業支援にあたっては、経営資源が不足している実態への配慮が必要で、企業に寄り添う姿勢のなかに、支援策のきめ細かさが表れてくる。

◎トータルな企業支援
 中小企業の経営課題は、課題が顕在化している経営分野のみにとどまるものではなく、他の経営分野とも関連している。課題が潜在化している経営分野もある。中小企業支援は、企業の課題をトータルで捉えた上で、展開することが必要だ。
 また、中小企業支援策は、金融・税務・労働・取引・生産・技術・情報・環境など多岐にわたっている。経営課題解決のために、どの支援策が有効なのか、企業にとって分かりづらい面もある。経営課題をトータルに捉えるとともに、施策の効果的な活用をコーディネートすることも重要だ。
 中小企業のトータルな支援のためには、支援策のさらなる拡充とともに、支援機関・団体の一層の体制強化が求められる。特に、支援機関・団体は、その果たすべき役割や企業現場に密着する体制づくりなどについて再点検し、その機能の拡充を図ることが急務となっている。「制度疲労による機能不全はないか」との問いかけは、変化の激しい企業環境のなかで、常に持ち続けなければならない。
 

 支援策や支援体制には、環境変化に対応する機動性や柔軟性がなければならない。中小企業を取り巻く環境変化に対応するためには、企業の経営力向上がますます重要となっている。中小企業は経済活動の源泉であり、産業や生活を支える役割を果たしている。中小企業の振興は、重要施策のひとつである。中小企業の経営力向上を図るために、これまでの経験と知識を生かし、企業支援への真摯な取り組みを続けたい。

市町村における産業振興策推進の視点

 長野県下市町村においては、厳しい経済環境の中で、地域産業の振興と企業の経営基盤の強化などを目指して、産業振興のための諸施策を推進している。各自治体では、それぞれの地域の産業特性を踏まえて施策を展開しているが、行政改革の推進とあいまって、振興策の成果が問われている。

 また、自治体を取り巻く環境変化や住民ニーズの多様化の中で、これまでの施策の枠組みにとどまることなく、変化に対応する新たな施策や柔軟かつ機動的な施策展開が求められている。

 そこで、こうした状況下で、市町村が産業振興策を推進するにあたっての視点について考えたい。

1. 産業振興ビジョンの明確化と施策の優先順位
 産業振興策を推進するにあたっては、産業振興のビジョンと振興指針を明確にし、市町村の総合計画の中に明確に位置づけることが重要だ。ビジョン策定にあたっては、地域経済環境や産業データの分析から、地域の産業特性を明らかにするとともに、今後のリーディング産業・重点産業が何かも明確にすることが必要だ。
 さらに、行財政の厳しい中で、振興策の優先順位を明確にしながら、バランスある施策展開が求められる。施策展開に要する予算や人員の全体に占めるウエイトは、施策の重要性の認識度合いを示しているといえる。
 施策の成果は、商品販売額や工業出荷額、雇用や住民所得などの数値に如実に表れるので、産業人材の育成や国・県の産業支援施策との連携も進めながら、振興策の成果を高めたい。
 

2.地域資源の活用システム
 産業の振興を図るためには、地域の固有資源の活用が欠かせない。地域の長い歴史の中で育まれてきた地域資源は、地域の特性・個性であるとともに、地域活性化や産業振興の要素になるものだ。その資源を活かすことが必要だ。
 そのためには、地域資源を活用するための循環システムへの理解が欠かせない。地域資源の循環システムは、「自然」「産業」「文化」「生活」「社会」の地域資源分野から、地域の特性を抽出し、活用資源を特定した上で、地域資源分野にフィードバック展開するという活用体系を意味する。地域資源を活用する方策は、埋もれた資源の活用、顕在化資源の再活性化、新たな資源の創造など多様である。
 地域資源活用の視点は、観光振興はもとより、農商工連携、地域ブランド創出などにも欠かせない。

3.関係団体や住民団体との連携
 産業振興策の推進にあたっては、経済団体・業界団体や住民団体等との連携も欠かせない。行財政の厳しい中で、行政の人員にも制約があるなかで、それぞれの団体の目的と機能の発揮を支援し、団体との連携を効果あるものにしたい。団体との連携は、現場の声の聴取や情報交流の上でも有効である。
 また、住民団体等との連携では、住民等を対象にした提案公募型の事業を有効に機能させたい。この事業展開により、民間の活力や創意を一層醸成することができる。
 関係団体や住民団体との連携を通じ、産業・企業間や地域の人的ネットワークづくりを進めることは、産業振興の基盤となる。

4.行政改革と行政サービスの向上
 行財政の厳しい中で、各自治体は、行財政の効率化を図りながら、行政サービスの向上に努めている。産業振興も費用対効果の視点から、実効ある施策展開を図らなければならない。そのために、施策の意義や目的について、行政内部の意思統一を図り、内部の連携を一層強化したい。
 ともすると、縦割り行政の弊害が指摘されるが、内部部署間で担当分野の壁を作らないことが必要だ。また、行政に求められるのは、柔軟に対応する体制や「住民目線」での見方や考え方である。行政サービス向上に向けて、窓口や電話応対の改善を図ることは必要だが、その根底にある行政マンとしての目線や考え方の転換こそが不可欠だ。現場の悩みや住民の要望に寄り添う行政でありたい。公平性に基づく全般支援か、個別重点支援かの選択もある。
 さらに、施策を推進する人材の育成も欠かせない。地方自治体においては、マンネリ化防止などのために、人事の定期的な異動が行われるが、それが、専門スタッフの配置や育成の支障とならないようにしたい。そのためには、異動する業務範囲や年数への配慮も必要となる。要は、スタッフの意欲と意識の問題である。
 また、外部スタッフの活用や他の自治体や関係団体との人的交流も視野に入れたい。

5.産業振興策の周知と共通認識
 産業振興策の立案と推進にあたっては、企業の声を反映させるとともに、施策内容の周知と共通認識が必要だ。施策の立案に際して、現場の状況の把握は不可欠で、現場の声を聞くことを基本としたい。現場からの直接聴取、業界団体や経済団体を通じての聴取など、その方法は様々だ。

 また、施策の推進にあたっては、内容の周知を図るとともに、産業課題の解決に向けた施策展開への共通認識が欠かせない。
 他方、現場の水準の状況によっては、行政のリーダーシップのもとに、あるべき方向を示し、トップダウンで施策を強力に推進する方策もある。どのような方策を講ずるかは、施策の成果を想定しながら、状況に応じた対応が必要だ。
 
 

「健康立県長野」の提唱

長野県は「観光立県長野」を目指している。

これも、一つの方向だが、加えて「健康立県長野」を提唱する。

その理由は、三つ。
1.長野県は長寿県である。
2.健康に活用できる地域資源が豊富。
3.食への関心が高く、地域の食材を生かした料理が豊富。

「健康立県長野」を目指した民間プロジェクトを提唱していく。